法人減税と外形標準課税

最近話題の法人減税について。

麻生財務相は法人税率5%下げ念頭、34.62%からの引き下げ

法人減税を知った当初は、
あまり意味がないのではないかと感じていた。

ちゃんとした大企業はしっかり利益を残して法人税を納めている一方で、
中小企業、特に創業社長がひとり株主の会社の多くは、
脱税とまでは言わずとも目一杯節税と利益調整をする事で
法人税の支払いをほぼゼロに抑えていると思う。

法人税が下がる事で「じゃあ利益を残そう」となるはずもなく、
大企業についても変わらない、つまり税率が下がる分だけ
税収が減るだけではないかと思っていた。

下記のダイヤモンドの記事なども読んだが、
その世論調査でも約8割が反対という結果になっていた。

 

法人税減税に正義はない公平な税制を歪めた成長戦略

法人減税のアンケート結果

※この世論調査の結果について追記あり

 

けど本当にそうだろうかと、
興味が湧いてきたので色々と調べたついでにメモを残す。

ロイターの記事を3つ続けて引用。

ロイター企業調査:法人減税20%なら半数が国内設備投資増強

長年抑制されてきた国内設備投資が動き出す機運がようやく高まってきた。回答企業の5割以上が減税分を国内投資に回すと回答した。

海外ではなく、あえて国内設備投資に回すことについて「ここ数年メンテナンスに関わる設備投資を抑制してきたため、老朽更新が急務」(化学)といった声が出てきた。「歩留まりや生産性を考慮すると、国内生産拠点の魅力は大きい。またMade in Japanは変えられない価値がある」(ゴム)といった前向きの考え方も目立つ。

私が冒頭に記載したようなセコイ考え方ではなく、
やはり大企業はビジョンがしっかりしていると感じる。

 

政府税調専門部会が法人税改革案を了承、中小法人への課税強化提言

背景には、全法人の99%が中小法人と分類され優遇される税構造のいびつさがある。大田氏は「人手不足が顕在化し生産性をあげることが重要な課題になるなど、経済環境が転換点を迎えている。このなかで、中小企業をひとくくりにするのではなく成長する企業をもっと伸ばす税にしていかなければならない」と改革の狙いを指摘し「全部をひとくくりにして中小企業は保護の対象にするのはやめようということ(思想)が貫かれている」と説明した。

政府税調が税率下げの法人税改革決定、財源は「広く・薄く」

法人全体の約1%の資本金1億円超の大企業が法人税収の65%を負担する今の負担構造を見直し、「広く・薄く」負担を求める構造に変える。こうした構造改革で、提言は「一部の企業だけでなく、広く税率下げの効果が及ぶことから、新しい産業や新規開業が行われやすい環境を作ることになる」とした。

 

資本金1億円超の大企業が全法人の約1%で、
その全体の1%の大企業が法人税収の65%を負担していると、
残り99%の中小企業がいかに法人税を払っていないかを実感しました。

この総務省の資料pdfにも記載されているが、
全法人約250万社のうち、資本金1億円超えは約3万社との事。

【制度の概要】
対象となるのは 資本金1億円を超える法人。
(全法人約251万社のうち、約3万社が対象。)

 

法人税は資本金が1億円を超える大企業かどうかで税率が大きく分かれる、
もちろん大企業のほうが税率が大幅に高い。

こちらは過去に私が書いた投稿であるが、
中小企業で利益が少ない場合の法人税は実質23.98%である。
しかし大企業のそれは40%を超える場合もある。

 

で、これまで外形標準課税については
資本金1億円を超えたら法人税率が違うぐらいの認識しかなかったが
よく調べてみるとそれだけでなく、付加価値割資本割というのが追加されるようだ。

詳しくは前述の総務省のpdfが分かりやすいので下に引用する。

外形標準課税

■付加価値割
付加価値割

■資本割
資本割

 

赤字でも資本金の額の0.2%を納めるとか
給与支払い額とかの0.48%とかって相当厳しいなぁというか
そりゃ大企業だけで法人税全体の65%いくわって話です。高すぎです。

自分がスタートアップの零細企業なので
大企業がここまで税負担が多いとは知りませんでした。

 

その大企業向けの税率を下げて、
外形標準課税の対象を1億円よりも下げて対象社数を増やす、

つまり「広く・薄く」負担を求める構造に変える、
これはいい事なんじゃないかと思ってきた。ナイス麻生太郎です。

 

(追記)
日経の世論調査では4割賛成、4割反対とほぼ互角だった。

日経リサーチの世論調査

ダイヤモンドの場合は、反対記事を読まされた後のタイミングでの
いわば恣意的なアンケートなので8割反対にもなるという事であろう。